2025年7月26日土曜日

印画紙の調色について

 

 僕がやっているのは白黒写真ではなく、モノクローム写真である。実際には白黒と言っても紙の材質や乳剤によってそれぞれの色調が存在する。印画紙の種類で、青みがかった冷黒調、赤みがかった温黒調、中間の純黒調が販売されており、各社それぞれの特徴がある。それとは違い印画紙の銘柄ではなく、調色液で色調を整えることもでき、表現上、とても重要な要素である。

 調色処理は、作品のアーカイバル処理(長期保存処理)も同時に兼ねている。アーカイバル処理だけが目的であれば、適切に定着と水洗処理が終わった印画紙にフジのAGガードを塗布すればいいのだが、AGガードだと「適切」を担保できない。そもそもAGガードってどういう仕組みで銀画像保護が出来るのかな。

 それに対して、調色液を使った場合、水洗処理が適正に出来ていない場合は印画紙内の残留物と反応し、がステインとなって現れるため、確認が可能である。ステインがなく調色されている印画紙は、アーカイバル処理が行われているということでもある。

 つい最近まで、コダックT-8処方の多硫化調色液に、セレニウム調色液を混ぜた調色液を自家調合して愛用していた。

<コダックT-8処方>
多硫化カリウム(硫肝) 15g
炭酸ソーダ1水塩 5g (炭酸ソーダの場合、4.3g)
セレニウムを添加すると、調色がされやすいので、セレニウムトナーも加える。

イルフォードセレニウムトナー(1:4)200CCで、総量2リットルとする。                            


 たまにAGガードを使うときもあるが、最終工程ではいつもこの調色液を使用していた。一度調合してしまえば、一生使えるような処理液なのだが、うっかりこぼしてしまった。
 再調合しようと思い、多硫化カリウムの試薬の保存瓶を見たら、完全に劣化(酸化?)していて使えない状態になっている。新鮮な状態の多硫化カリウムは、硫黄の匂いがするし、そもそも色がこんなに緑色ではなく黄色味がかっている。それでも、念のため調合し、試してみるがやはり印画紙にまったく変化がない。

 そこで、新しく多硫化カリウムの試薬を買おうとあちこち探してみるが、以前購入したメーカーに問い合わせたら、既に生産終了。なかなか個人で試薬を買うのも難しく、困っていたところ、多硫化カリウムを使った調合済のトナーが、ドイツのMoerschからMT-5という商品で取り扱いがあることを発見した。もうこれに頼るしかない。

 国内では入手できないセレニウムトナーも買っておこうと思い、同じくドイツのBelliniから販売されているSeltoneも取り寄せることにした。買ったのはドイツのMaco direct。こうしてみると、ドイツはまだまだゼラチンシルバープリントが盛んなのだろうか?

 他にもついでに印画紙を注文したので、届くまでに一か月くらいかかったが、無事に税関も通過して手元に届いた。荷物の受け取り時に消費税は別途支払った。

 というわけで、やっとここからが今回の本題である。こうして記録に残しておかないと細かいことはすぐに忘れてしまうので、そのためにもブログはいいのかも。
 多分、国内でこんな苦労しているのは僕くらいだと思うので、あまり参考にはならないのかもしれないけど、ネットに残しておけば、いつか誰かの参考になるのかもしれないし。

 早速、届いた二種類のトナーを調合し、最終的にはこの割合で落ちついた。

①<マーシュMT5 Moersch MT5>
250CC
②<ベリーニセレントナー Bellini SELTONE>
50CC
上記①+②+水1200CCで総量1500CC

ただ、これはかなり濃い状態だ。このまま水だけ増量して2000CCにしても多分、問題はない。

しかし、、、、

以前まで自家調合していたトナーとはやはり違う。水洗の終わった純黒調印画紙をダイレクトにトナーに入れても、まったく色調変化はない。ただのアーカイバル処理のみになっている。

そこで、再度説明書を見てみると。。。。。。


クールブラウンの画像トーンにはポリサルファイドトナーをご使用ください。
ウォームトーンのエマルジョンには直接トナーをご使用ください。
コールドトーンおよびニュートラルトーンの用紙は、鮮やかな発色が必要な場合、漂白後に間接的に調色することができます。
よりウォームブラウンのトーンにはシエナサルファートナーを、クールパープルのトーンにはカーボントナーをご使用ください。希釈率:1+10~1+50。このトナーは、換気の良い室内、または屋外でのみご使用ください。


 温黒調印画紙の場合は、水洗後にダイレクトな調色ができるみたいだけど、純黒調印画紙の場合は、漂白しないといけないみたい。

 ということで、漂白液でちょっとだけ漂白、定着、水洗の後に調色すると、みごとな濃茶となった。

 もしかすると、金属銀のままでは反応が鈍いのかもしれない。漂白することで、ハロゲン化銀に戻し、さらに調色することで硫化銀となり濃茶になるのではないだろうか。

 使い方はある程度分かった。秋以降、本格的に使ってみよう。この調色液はすごく大事なので、今度こそこぼさずにずっと大切に使おう。

0 件のコメント:

コメントを投稿