EOS-KissX3 super-multi-coated-takmar 55mm F1.8
2025年7月、ライカM-Aを買った。以前にライカを買ったのは2001年のM6TTLなので、24年ぶりとなる。ちょっと今回の話は長くなるかもしれない。
1台目のライカM6TTLのこと
M-Aの話をする間に、M6TTLのことから話さないといけない。なぜ、M6TTLを買ったのか。その当時使っていたカメラは電気で動くカメラばかりだったので、自分と一緒に歳を重ねることが出来るカメラが欲しかった。それから、その年に結婚することになって、趣味で大きな買い物なんてもう出来ないかもしれないと思ったからだ。しかし、そう思っただけで、実際にはそうはならなかったけど。😅
物事は自分の意志で決定しているように思えるけど、そうではない気がする。ロースペックな機械式M型ライカを欲しいと思うのは、電子で自動化されたカメラに囲まれた時代に生きた反動とも言えるし、世界経済や、自分個人のライフイベントや様々な要因が重なった結果だ。
まあ、それはともかくとして、2001年当時はどんな時代だったかというと、2025年の今と違い、円の力がべらぼうに強かった。まだヨーロッパの通貨はユーロではなかった。フィルムや印画紙も安く潤沢に供給されていた。
フジのプレスト400(135)は、100ftが2500円くらいで買えたんじゃなかったかな。100ft だと36枚撮りを18本そこから巻くことが出来るので、1本あたり140円で高性能なフィルムが使えた時代だ。印画紙も安くてアグファの8×10のRC印画紙が100枚入りで5000円くらいだった。暗室用品も、ちょっと大きなカメラ屋ならどこにでも置いてあった。
その頃、日本シイベルヘグナーがライカの輸入代理店をしていたのだが、並行輸入品もあちこちで売られていた。M6TTLの新品価格は、正規輸入品が24万円くらいで、並行輸入品のズミクロン50mmF2が7万円くらい、ズミクロン35mmF2ASPH.が13万円くらいだった。
ボディは、正規輸入品と並行輸入品とでは、デザイン的に違いがあったのと保証の関係で正規輸入品を買った。レンズは、保証以外は違いがまったくないので、並行輸入品を買った。
ちなみに、中古ライカを買おうとはまったく思わなかった。なぜなら最初から中古を買うのはハードルが高かったし、その当時、古い時代の中古ライカは結構高かったし、今みたいにインターネット上に豊富な情報があるわけでもなく、状態の良い中古を探すには都市部へ出かけて自分の足で探すしかなかった。
買うまでにかなり逡巡し、お金を握りしめて電車に乗って名古屋のカメラ屋まで行ったんだけど、ブラックかシルバーか決めきれずに、買わずに帰った。二度目行った時も迷ったんだけど、店員さんに、
「確かに迷うお客さん多いけど、どっちを買っても、買った後で満足が出来ますよ。」
と、言われたので、ボディはシルバー、レンズはブラックにした。レンズはシルバーでもブラックでも今とは違い価格が同じだった。ただ、材質が違うせいかシルバーは重い。そんな理由でブラックを選んだ。
ボディの色を選ぶのに悩んだのは時代的な背景もある。20世紀後半多くのカメラで、シルバーとブラックの選択が出来た。しかし、ブラックの方が数千円高かったのだ。ちょっと高いということもあり、ブラックボディの方が高級な感じがした。ニコンF3もキャノンnewF-1もペンタックスLX等のフラッグシップ機はみんなブラックだった。
でもその時代からしばらくしてAFカメラが主流になってくると多くのカメラの筐体はプラスチックとなり、色もブラックになった。つまり、ブラック=プラスチッキーでチープなイメージになったのだ。
代表的なライカのモデルになると、バルナックカメラの時代はシルバーで、M3やM2はシルバーのイメージしかない。M4は両方。M5はブラック、M6は両方のイメージだった。 こういう機械式のカメラはトラディショナルなデザインがいいと思っているので、最終的にシルバーを選んだ。僕の選択は間違っていなかった。良かった良かった。
このM6TTLだが、フラッシュを使用する際にTTL調光が出来るようになったので2ミリほどボディが高くなった。そのため、ライカマニア(僕は違うけど)の中では評判がよろしくないようである。フラッシュなんてこのカメラでは使わないのに余計な機能かなと思う。
そもそも、道具というのは進化し切ってしまうとそれ以上開発するところがなくなり、使いもしない機能を付加してより複雑化していくものなのだ。それはほんとやめて欲しい。
シャッタースピード回転ダイヤルも大型になり、ファインダー内露出計の指示方向と、ダイヤルの回転方向がM6までとは逆になっている。これは正しい進化だと思っている。
M6TTLはあの頃の僕にとっては高い買い物だったが、今売ると、僕が買ったときよりもかなり高く売れると思う。売らないけどね。こんなことならまとめて10台くらい買ってけば良かった😜
それから24年、たまに取り出してM6TTLを使っている。一度だけ、フィルムカウンターが動かなくなり、修理に出した。どことは言わないが、正規店に修理について尋ねてみたら
「ドイツに送るので10万円くらいから・・・・・・・」
と、言われ、正規品だということで安くなることもないらしく、意気消沈して、いつも利用している修理店に持ち込んだら2万円で修理してもらえた。それ以外に、故障はなく、露出計も問題なく動いている。
レンジファインダーカメラのこと
M6TTLを使い始めてレンジファインダーカメラのおもしろさにのめり込み、ロシア製のゾルキーやジュピター50mm、コシナ製フォクトレンダーの25mmを買ってみたけど、それらは性に合わず手放してしまい、M6TTLと同時に買った2本のズミクロンが手元にずっと残っている。
レンジファインダーカメラに慣れた2003年、中判レンジファインダー機のニューマミヤ6を手に入れた。これは旅の良い相棒になった。
歴代M型ライカについて
この間、ずっと他のライカも研究していた。そのうち2006年にM8が発売となり、それ以降、M型ライカはデジタルカメラになっていった。デジタルライカには興味が湧かず、他のM型ライカを探すなら、時代を遡る必要があった。
M3のファインダーと操作感が素晴らしいのは知っている。でも35mmのレンズが使えない。どうせなら、自分の生まれ年のライカを探そうかと思い始めた。1969年製造の一般的なM型ならM4、製造数が少なくて高価だけどM2-Rもある。M4はM型フィルムカメラの最終進化形態ではある。
しかし、M4から巻き上げレバーやファインダーセレクター等にプラスチック部品が使われ始めた。それに比べて、M2-Rは、プラスチック部品がなく、金属感満載である。しかし、こんな製造数の少ないカメラ、しかも半世紀も経っているので状態の良いものに出会うのは大変困難だ。
そんなわけで、1969年製のシルバークロームのM4をずっと探していた。探していたんだけど、常に同じ熱量で探していたわけではない。
2003年発売でずっと現行品のライカMPはどうか?とも思った。軍艦部にLeicaと、書かれているがこれがプリントなのか刻印なのか分からないが、これが正直好きになれないし、露出計内臓ライカなのにM6TTLとシャッタースピードダイヤルの回転方向が逆なので、使用する際に混乱しそうな気がした。
そして、2014年にM-A発売。こんな露出計のないカメラに60万円も払って誰が買うの?と思った。そう思ったんだよ。その時は。
次の変化は、2022年にM6の復刻版が発売となった。正直これには驚いたが、ブラックボディしかないし、シャッタースピードダイヤルはMPと同じ回転方向だし、そもそもM6TTLとたいして違いがない。というわけで、これもなし。
そんなわけでM-A
そうこうしているうちに歳月はどんどん過ぎていく。再びM4を探していたのだが、M4の気になるところはプラスチック部品が使用されていることだけ。よくよく考えたら、M4って露出計ないやん。いや、むしろないから魅力的なのだ。
じゃあ、露出計のないM-Aってどうなの?M-Aは、巻き上げレバーとファインダーフレームセレクターにプラスチック使ってないし、これでいいんじゃないだろうか?バースイヤーじゃないけど、それよりもプラスチック部品が少ないことを優先したい。
しかし、2025年現在、M-Aはどんどん値上がりして新品価格は90万円くらいになっている。10年で50%の値上げ。今後安くなるとは到底思えない。その点、M4は、状態の良いものと出会えたとしても40万円もあれば十分じゃないだろうか。それに、大都市圏に住んでいるわけではないので、状態の良いM4を探すためにはネットを探すか、M4を探す旅に出なければならない。
あるのかないのか、また状態が気に入るかどうか分からないのに、旅を何度も繰り返すのは辛すぎる。実はニューマミヤ6は、そんな旅を繰り返してようやく買うことが出来たカメラだったりするので、カメラ探しの旅は経験済みなのだ。
そんなM4に40万円出すくらいなら、もう50万プラスして確実に問題のない状態の新品M-Aを買えばいいじゃないかと思った。残りの人生の時間も限られているんだし。
普段は、10円単位でケチケチして買い物しているけど、こういう時はちゃんと決断するんです。
色は迷わなかった。M-Aのブラックって軍艦部に何も書いてないんだよね。のっぺりし過ぎ。というわけで、迷わずにシルバー。
M型ライカは、レンズ1本、ボディ1台とか言われている。レンズは既に2本あるので、ボディが増えても困らない。2台目のM型ライカを買うことは、2001年に2本のズミクロンを買ったときに、予定されていたようなものだ。
M-Aは、注文してから2週間くらいで手元に届いた。早速、付属の革ストラップを通して、僕のラッキーカラーの黄色のソフトシャッターレリーズを付けてみた。
他の付属品にコダックのトライXが1本あるんだけど、フィルムの期限が来月になっている。このM-Aっていつ作ったの?
こんな露出計の付いていないカメラ誰が買うんだろって思っていたが、まさか僕が買うとはね。何事も良く知っていて敢えて選択しないものはずっと選択することはないけど、まるで検討しなかったものって何かの拍子に急に注目し始めることもある。
M6TTLは、人生の節目でいろいろなものを撮った。祖母が亡くなった時にもその顔を撮った。そのイメージはネガのまま保管している。プリントすることはないだろうけどそれでいい。
M-Aは、僕をどこに連れて行ってくれるだろうか。
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