琵琶湖の西側へ久しぶりに行こうと思い、バイクのトランクにニコンNew FM2とレンズ3本、フィルム2本、SCフィルターを積んで出かけた。
岐阜に住んでいると、琵琶湖の東側は行きやすいのだが、西側は距離があるので、どうしても足が遠のいていた。
数年ぶりに来てみると、湖岸の草木の繁茂や造成工事によって景色が変わっている。冬になったら大判カメラを持って撮りたいと思う場所を何か所か発見したので、メモしておいた。
今日の旅の友にNew FM2を選んだのには、ちょっとした理由がある。
少し前にニコンFGで撮影していたところ、36枚を超えてもまだ巻き上がった。もしかしたら、フィルムローダーでフィルムを巻くときに少し長めに巻いたのかなと思い、そのまま撮っていたら、38枚、39枚と巻き上がっていく。
ここまで来ると、さすがにカメラ内部で何か異変が起こっていることに気づく。
予想される事象としては、フィルム装填を失敗して1枚も撮影できていないか、もしくは、途中でフィルムが切れて巻き上げスプールに溜まっているか。
おそらく後者であろうと当たりをつけ、暗室で裏蓋を開けたが、その予想は外れ、パトローネ室内に完全に巻き取られたフィルムがあるだけだった。
果たして、このフィルムは未露光なのか、それとも露光済みなのか?
次の取るべき行動は、露光済みであると判断して現像するか、もしくは、未露光であると判断してベロを引き出し、再び撮影するか……。
前者の予想が裏切られた場合、何も写っていない素抜けのネガが出来上がる。後者の場合は、コマ間が不ぞろいの多重露光、かつ露光過多のネガが出来上がる。
まるで、「シュレーディンガーの猫」のように、現像して確認するまでパトローネの中の世界は確定しないのだ。
僕は、後者を選んだ。
なぜなら、素抜けのネガはただの失敗だが、そこに光の記録が存在している限りは、やりようがあるかもしれないからだ。
今回のトラブルはFGに問題があったわけではない。僕の操作ミスによるものだ。それは分かってはいるのだが、今回は心理的にFGから気持ちが遠のいた。
そんなわけで、New FM2に久しぶりに電池を入れて、FGから取り出したフィルムを装填した。今回は、念入りにだ。
このNew FM2というカメラ、かなり付き合いの長い知り合いとカメラ交換をして僕の手元にやってきた。彼はモデル末期のものを新品で購入していたので、素性の知れた、信頼できる機体である。
そうでなくとも、このNew FM2は機械式一眼レフカメラの終着点とも言うべき存在で、ケチの付けようがないカメラである。敢えて言うならば、コストダウンのためにシャッタースピードダイヤルの表示などが刻印ではなくプリントになっていることくらいかな。ファインダーは明るくとても見やすい。マニュアルでピントを合わせないといけないので、スクリーンの出来はとても重要だ。ペンタックスSPはカメラの作りはいいが、古い機種であるためスクリーンは暗い。
もともとニコンのFEシリーズは、どれも使いやすく説明書いらずのUIであるが、その中でもこのNew FM2は「ザ・スタンダード機械式制御一眼レフ」なのである。それ故か、中古市場でも驚くほど安定している。
生涯、手元に置いておきたい信頼のできるカメラだ。唯一の心配事は、露出計かな。
そんなことを思いながらNew FM2を首から提げ、「露光済みかもしれないフィルムで撮影している」という一抹の不安を抱えながら湖畔を歩く。ようやくそのフィルムの撮影を終えると、次の、正真正銘の未露光フィルムを装填した。
撮影が終わるころには、トンビが鳴きながら旋回し、鵜が編隊を組んで飛んでいる空が、徐々に夜の気配を帯びてくる。
帰り道、バイクを操作しながら、もう一度思う。FGに問題があるわけではない。あくまでも僕の操作ミス。そして確認ミス。
