2025年8月23日土曜日

フィルム用現像液について

 白黒フィルムの現像は、とても簡単である。暗室もいらないし、一回目からほぼ失敗なく出来ると思う。独学でも十分だ。

(中段、少し読んでよく分からない場合は後段まで読み飛ばしてください)

 白黒フィルムの現像は、コントラスト、粒状性、シャープネスが、ここでほぼ決まってしまうので、重要な工程である。引伸ばしの段階でそれを補うことは困難だ。作家独自のトーンがあるとしたら、この工程で形成されると言ってもいい。

 カラーネガフィルムはC41、リバーサルはE6処理で現像されるが、現像液も処理温度も決まっているため選択の余地はない(例外を除く)。そのため、どこで現像しても工程さえ逸脱しなければ同じ結果になる。

 白黒フィルムの現像液は用途によって様々な種類がある。一生かかっても、試すのは無理なくらいの数があると言っていい。でも、ざっくり分類するとこの4種類だと思っていい。


1 標準現像液

2 微粒子現像液

3 増感現像液

4 高先鋭現像液


 ただし、はっきりとこのように分類は出来ない。例えば国内で最も安価で入手しやすいフジのSPD(スーパープロドール)は、標準現像液と増感現像液の中間くらいだと思うし、ミクロファインは微粒子現像液ではあるが、希釈すれば高先鋭化も期待できる。

 そして、現像液によって感度が出にくいものがあるので、そうした現像液を使う場合は、撮影感度をISO感度よりも下げて撮影する必要がある。

 成分を見れば、どんな性格の現像液なのか、だいたい分かるようになってくる。どのフィルムにも、どの現像液にも「豊かな諧調で微粒子に仕上がるよ」と書いてあったりするが、それはそのまま受け取ってはいけない。あくまでも自分の好みで判断する必要があるのだ。

 以上が、基本的なことである。


 僕の場合は、感度は少々犠牲になってもいいから、柔らかい調子、豊かな諧調、微粒子、先鋭度はそこそこあれば良く、薬剤の調達が容易で安価なものを探した結果、シュテックラー氏二浴式現像液を使用している。少々、オカルト的な扱いをされる現像液ではあるが、20年以上この処方を愛用している。

 調合済みの市販品だと、D23が近いのかな。現像主薬のメトールと無水亜硫酸ソーダだけというシンプルな処方である。

 写真家(というか美術家)の杉本博司さんの著書の中に、アンセル・アダムズの教科書に掲載されている現像処方を全て試して、19世紀のメトール単体の処方に行き着いた。という下りがある。もしかしたら、杉本さんの処方もD23に近いものなのかもしれない。

 ちなみにD23は、標準現像液と微粒子現像液の中間くらいの位置づけである。

 白黒フィルムの現像なんて、すっかり枯れた技術だが、それでも比較的新しい時代の現像液はいろいろ出ているようだ。あまりにも多くの現像液を試していると、試しているだけで何年も過ぎてしまうし、試している程度の使い込み方ではその処方を極めたとは到底言えないので、気に入ったものが見つかったら、その現像液とずっと付き合った方がいい。それが自分独自のトーンになる。

 白黒フィルムは、できることなら自分で現像するのが望ましい。安価に済むだけではなくいろんな発見があるから。店に出してもいいけど、どんな現像液でどんな処理されているか分からないでしょ?多くの場合、経済性優先の強力な現像液で高温短時間処理されているんじゃないのかな。それは、失敗ではないけど決して調子の良いものではない。

 自分でやれば目的に合わせた現像液を選択できるし、減感、増感も思いのままである。

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