窓から差し込む光が、少しだけ穏やかになった。今年の夏も、ようやく終わりを告げようとしている。僕の暗室にはエアコンがなく、夏の間の暗室作業は諦めている。
現像液の温度を20度に保ったとしても、現像タンクから液を排出した瞬間に、フィルムが、高温の空気に触れて現像が進みすぎることは避けなくてはならない。毎年、梅雨の終わりに、僕は暗室の夏を越すための作業をする。
引伸ばしレンズ、印画紙、定着液を暗室のある二階から一階へと運ぶ。密閉容器に収めたレンズも、印画紙も、そして高温で白濁してしまう定着液も、僕がここにいない間、連日の酷暑に耐えられるか、不安だ。
今年の夏も、そろそろ終わりに近づき、道具たちは僕の帰りを待っていてくれた。暗室の扉を開け、埃を払う。夏の間に撮りためたフィルムが、現像リールに巻かれるのを待っている。僕だけの景色と静かに向き合う時間が、秋の訪れとともに始まる。
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