2025年10月21日火曜日

雪の原

  

 岐阜市の写真ギャラリーpieni onniで、中判写真展に参加する。期間は10月22日(水)から26日(日)まで。ZINEも用意することにした。

 今回の展示作品の「雪の原」は、ニューマミヤ6で撮影した五枚組で、冬の奥伊吹。人の気配が遠のいた雪原に、ただ静かに佇む、草木の姿である。

 冬の奥伊吹に通い始めたのは、30年ほど前になる。はじめの頃は、雪国の暮らしを撮影していた。それに飽きると、一番奥の集落から、麓の集落に向かって、雪を踏みしめてひたすら歩き、その道すがらの風景を撮影するようになった。

 心の中には、北海道のような広大な雪原を背景にした孤高の樹木のイメージがある。しかし、身近な場所にはそんな雄大な風景はない。自然風景については、何回も通わないと満足のいく撮影結果が得られないので、冬の北海道に数日間滞在したくらいで、撮影に成功するとは到底思えない。それなら、この身近な奥伊吹の野原で何か見つけるしかない。

 「広大な雪原を背景にした樹木の風景」は見つけることは出来なかったが、人里近くの野原には、雪が積もっていて、そこから草木が顔を覗かせている。それらは、冬枯れの果ての姿であったり、静かに春の準備を勧めている姿であったりする。

 雪の中を歩く静寂の時間。ごく稀に、奇跡のような瞬間が訪れる。それは、草木の形、その配列、雪の積もり具合、そしてその時の光の状態、これらが完全に調和した時にのみ現れる存在である。数日後に、同じ場所を訪れてみても、雪の状態が変わっていて、違う存在になってしまっている。

 その断片を拾い集めたのが「雪の原」である。

以下、ギャラリーで作品に添えた説明文。


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 雪の原

 私の作品シリーズ「雪の原」は、雪に覆われた風景から浮かび上がる植物の繊細な形態を捉えたモノクローム写真です。

 雪に埋もれた植物の枝や茎は、白い背景に浮かび上がる繊細な線として抽象画のように現れ、生命の儚さと強さを同時に表現しています。

 雪原から突き出た細い茎や枝は、まるで白紙に書かれた漢字や古代の象形文字のように見えます。それらは自然が描いた詩のようであり、私たちに解読を促す暗号のようでもあり、自然界に存在する多様性と統一性の調和を示しています。

 この作品群は、見過ごされがちな日常の風景の中に潜む美を発見する試みでもあります。雪に覆われた荒涼とした風景は一見すると単調に見えますが、注意深く観察すると、そこには繊細で力強い生命の痕跡が刻まれており、来るべき春への約束を象徴しています。

「雪の原」は、自然の持つ静かな表現力と、人間との関係性、そして時間の流れについての黙想を促す抒情詩です。


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