中でも真っ先に、温めなくてはならないのは定着液で、20度を下回ると活性が落ち、画像の保存性に大きく影響してしまう。現像液のように像が浮かび上がってくるような目に見えるおもしろみこそない工程だが、目に見えない次元で進行する化学反応だからこそ細心の注意を払う必要があるのだ。
そうして今年もまた、そんなふうに暗室作業をしなくてはならない季節になった。
冬支度をして、始めた焼いた写真は、オリンパスのPenD3で撮影したネガだ。引伸ばし機のネガキャリアにハーフ用はないため、6×6のネガキャリを使い、2コマを一枚の印画紙に焼いてみた。これは物語の二連画のようであり、時間の流れや対比を生まれ、なかなか面白い。何より、作業効率が上がるのは嬉しい誤算だった。
長年、趣味として写真を続けてきたが、画質的に劣るとの一点の理由で、ハーフカメラというフォーマットは避けてきた。しかし、昨年ペンタックス17というハーフカメラが新発売となったニュースが僕を揺さぶった。ペンタックスがフィルムカメラを開発していたことは知っていたが、まさかハーフカメラだとは思わなかった。
ファインダー像が縦型であるハーフカメラは、スマートフォンに慣れた現代の視覚と親和性が高いからなのだろうか。あるいは、フィルム価格が高騰する中、倍の枚数が撮れる経済的な利点からだろうか。
画質以外のところに、僕が見落としていた魅力があるに違いない。それは使ってみないと分からないと思い、昨年の夏にオリンパスPenD3を手に入れた。数あるハーフカメラの中からPenD3を選んだのは、Penシリーズでマニュアル露出設定を備えており、レンズの開放値が明るいカメラだったから。
この一年で4本ほどフィルムを通した。なるほど、デフォルトで縦で撮影できるのはおもしろい。このカメラを使うときは、縦でしか撮らないことにマイルールを定めた。
カメラ本体もとても小さい。このカメラを使ってから、135フルサイズを使うとその大きさに違和感を覚えてしまうほどだ。
まだ大きく引伸ばしたことはないので、どのサイズまで大きく出来るか分からないけど、このカメラで撮影した写真は大きく引伸ばすためのものではないと思った。粒子感を活かした表現にするために大きく伸ばしてもいいが、まずは小さく引伸ばして、その凝縮されたサイズ感を楽しもう。
この日の暗室作業は、何枚かのテストプリントが出来たのでひとまず終了。
外は冷たい雨が降り始めている。印画紙を水洗している間、僕はコタツに潜り込み、温かいココアを飲みながら冷えた脚を温めた。
印画紙水洗の水が流れる音と、雨が地面を打つ音。
異なるリズムの二重奏が、冬の静かな夜をやさしく揺らしていた。

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