2025年12月9日火曜日

形而上のレンズ交換

 

 18世紀のドイツの哲学者カントは、人が世界をそのまま捉えるのではなく、ある種の枠組みを通して認識していると述べた。

 その考えを借りつつ話を進めると、世界をどのように認識するかは、個々の経験や先入観、文化的背景によって影響される。つまり、僕たちは世界そのものをそのまま認識するのではなく、無意識的な枠組みによって変形されたものを認識している。深層心理と言ってもいい。

 認識は単なる外的な世界の反映ではなく、無意識的な枠に基づいて選別された結果であり、その枠に縛られるため、物事を枠からはみ出した、思いもよらない方法で認識することはできない。

 図にあるように、現象を認識の枠というフィルターを通すと、クローズアップされたり、切り捨てられたり、本来なかった物が意識の場に出現したりする。

 写真を撮る瞬間、何を「美しい」と感じるか、何にシャッターを切るかは、意識的な判断よりも無意識的な反応や感覚、違和感によって決定され、同時に作品に個性を与える。

 認識の枠が無意識領域に存在する理由は、意識的に行う行動は思考負荷が高く、瞬時に行えず、安定的に対応ができないためである。無意識的な枠組みは、日常的に効率的に反応し、行動できるようにするために存在する。

 したがって、同じような作品しか作れなくなり、自分で自分の作品に飽きてきた場合は、認識の枠を変えなくてはならない。それには、無意識領域の再編成が必要となる。具体的手法としては、フロー体験、文芸作品の貪欲な吸収、旅などの新たな環境体験により、認識の枠を揺さぶる必要がある。新たな視点を得ることで、世界を見る「無意識領域のレンズ」が変わり、作品に変化が現れる。

 新たな「無意識領域のレンズ」を手に入れるための、最も手軽で簡便な方法は、カメラ屋に行き、欲しいレンズを手に入れることかもしれない。物理的に世界を見るレンズを変えれば、その体験は無意識領域に落とし込まれ、世界を見るための「無意識領域のレンズ」にも影響を与えることができるかもしれない。

 写真を志す人たちは、それを経験的に知っているため、そうしたロジックがなくても、無意識にカメラ屋でレンズを探しているのだろう。もはや夢遊病者のように。

 しかし、この方法は手軽で簡単であるだけに、得られる効果は限定的であり、深い変化をもたらすものではない。物理的なレンズを変えても、それだけでは根本的な認識の枠を大きく揺さぶることは難しい。だからこそ、認識の枠を変えるためには、内面の再編成が必要だと感じている。そしてそのためには、意識的な努力と深い内省が不可欠だと改めて思う。

 



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