2025年12月5日金曜日

「tokyo-photo.net」の残照

 

 かつて、銀塩写真を支えた技術情報サイトがあった。tokyo-photo.net。それは、銀塩ウェットプロセスによる写真制作にまつわるありとあらゆる知識が集う、さながら聖地のような場所であった。今思い返せば、あれは間違いなく一つの大きなムーブメントであった。

 その中で、定期的に開催されていた特別な企画がある。名を「グループプリントエクスチェンジ」という。極めてシンプルに言えば、暗室に籠る同好の士たちが、互いの作品を交換し合うという催しである。

 暗室作業に悦びを見出す人々は、基本的に全国津々浦々に散らばっていると言っていい。東京や大阪のような大都市圏ならともかく、僕の住む岐阜県において、自宅暗室を楽しむ人間が一体何人いるだろうか。10人もいないのではないか、とさえ思う。

 かくも孤立しがちな銀塩ウェットプロセス界隈において、誰かの生のプリントを手に取り、その息遣いを感じる機会は皆無に等しい。美術館で展示されている銀塩プリントも、確かに美しい。しかし、それを生み出した作家本人と対話することは難しい。その点、このエクスチェンジの相手は、同じ技法で格闘する同志である。彼らの作品を仔細に観察することで、どんな暗室環境で、どのような工程を経て完成したのかを、手に取るように知ることができる。

 それは、単なる技術への好奇心を超え、自分の作品へと直接的に応用が効く、かけがえのない学びの機会であった。

 僕は tokyo-photo.net のプリントエクスチェンジに何回も参加し、幹事を何度も務めたこともある。しかし、初回から20年ほどの時が流れ、かつてのメンバーは写真から離れたり、デジタルやSNSの世界へ移ったりと、それぞれの場所へと散り散りになってしまった。

 そんな中で、今月、当時のメンバーの一人と再びプリントエクスチェンジを行う運びとなった。昨夜、僕はかつてのように、魂を込めてバライタ印画紙にプリントを焼き付けた。印画紙が水中で揺れる度に、遠い日の記憶が蘇るようだった。

 年末、あるいは年始。彼の暗室から生まれたプリントが、僕の手元に届くのを心から待ち望んでいる。 


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