2026年7月7日火曜日

膨らむ電池

 

 
 フィルムカメラがオートフォーカス化される以前の時代、多くのカメラは露出計を動かすためにボタン電池を使用していた。1950年代から1960年代頃には水銀電池を用いた機種が主流であったが、その有毒性から、後にアルカリ電池や酸化銀電池へと置き換えられていった。

 僕が持っているペンタックスSP、オリンパスPEN D3、ミノルタハイマチックEは、いずれも水銀電池を前提に設計されたカメラである。しかし、水銀電池はすでに入手できないため、SPは電圧調整アダプターと酸化銀電池、PEN D3は空気亜鉛電池、ハイマチックEは簡易アダプターとアルカリ電池で代用している。
 
 この三機種は、僕にとって「二軍のおもしろカメラ」のような存在である。しかし、それでも仕上がる写真には特に問題がない。

 なぜ「二軍のおもしろカメラ」なのかというと、本来想定されていない代用電池を使っていることに、どうしても不安が残るからである。とはいえ、そのカメラならではの得難い魅力があるため、つい使ってしまう。

 SPやPEN D3のような機械式カメラは、電池がなくても撮影自体は可能である。しかし、本来は電池を入れて使うことを前提に設計されたカメラである以上、電池を抜いたまま使うことに、どこか違和感がある。

 もっとも、僕が信頼しきれていないわりには、これらのカメラはいつもきっちり仕事をしてくれる。
 「一軍の本気カメラ」でボタン電池を使うニューマミヤ6やニューFM2といった機種は1980年代以降のものが多く、電池にはLR44またはSR44が指定されている。

 僕はこれまで、安価なLR44を使っていた。ただ、液漏れや腐食の危険があるため、使わないときは電池を抜いて保管している。

 先日、取り外して保管してあったLR44を見ると、電池が膨らんでいるのを発見した。もしこれがカメラの電池室の中で起きていたら、厄介なことになっていたに違いない。

 実は、電池が膨らむ現象は昨年も経験している。二年続けて目の当たりにしたことで、多少高価ではあっても、今後は寿命が長く、電圧が安定していて、液漏れ耐性も高いSR44を使うことにした。

 露出計内蔵や電子制御シャッターを備えたカメラは便利である。しかし、その便利さは電池に支えられている。言い換えれば、便利さと引き換えに厄介ごとを抱え込んでいるとも言える。

 その点、電池をまったく使わないカメラは、ある意味では完璧である。電池切れを心配する必要もなく、液漏れや腐食に悩まされることもない。だからこそ安心できるし、そこに機械としての潔さのようなものを感じるのである。

 もっとも、そのようなカメラにも別の故障や不具合はある。それでも僕は、ときどき膨らんだボタン電池を眺めながら、便利さとは何か、そして道具を信頼するとはどういうことなのかを考えてしまうのである。

0 件のコメント:

コメントを投稿